レプトスピラ症、最近増えているかも?

最近、レプトスピラ症が疑われるような症状で来院するワンちゃんが増えています。奈良動物医療センターでも何頭かPCR検査でレプトスピラ陽性と出た子がいました。レプトスピラは日本全国で発生報告がありますが、特に関西はレプトスピラが多く発生している地域です。レプトスピラ症は発症すると命に関わることも多いこわい病気なので、飼い主さんに知ってもらいたいと思い今回取り上げてみました。

〇レプトスピラって何?

レプトスピラは、らせん状の形をした細菌で、人を含む多くの動物に感染する人獣共通感染症です。主に夏の終わり~秋頃に発生します。感染してもほとんど症状が出ないこともありますが、発症すると急性の腎不全や肝不全を伴う症状を引き起こし、死亡率の高い感染症です。感染して発症しなかった場合や回復後も、数か月~数年間尿中に菌が排出されます。人では4類感染症に定められており、動物では7種類の血清型について家畜伝染病予防法で届出伝染病に指定されています。


▲レプトスピラの電子顕微鏡画像
国立感染症研究所Webサイトより引用

〇どうやって感染するの?

レプトスピラはねずみなどの野生動物の腎臓で保菌され、尿中に排出されて水や土壌が汚染されます。レプトスピラは淡水中や湿った土壌で数ヵ月間生存するとされており、その土壌が他の動物の口に入ったり、小さな傷、口や眼の粘膜に接触したりすることで感染が起こります。発生場所としては、野生動物が多い地域の川や池、田んぼが多いです。

〇発症するとどんな症状が出るの?

5~14日ほどの潜伏期間の後、肝臓や腎臓などの臓器で増殖し、多くは急性肝不全により、口や眼の粘膜が黄色くなる黄疸がみられます。元気や食欲がなくなり、発熱や嘔吐などの症状も出てきます。急性腎不全となり尿が出なくなることや、粘膜から出血しやすくなることもあります。

〇診断方法は?

症状やワクチン歴、流行地域、血液検査結果から感染を疑います。
血液検査では黄疸数値の上昇、肝酵素の上昇、腎数値の上昇がよくみられます。
診断は、外部の検査機関に血液や尿を送ることによって行います。診断法としては、
①血液や尿のPCR検査
②ペア血清(発症直後と発症後2週間の血清)を用いた抗体検査
があります。結果は1~2週間程度で返ってきます。

〇治療方法は?

レプトスピラ症は急性に症状が悪化してしまう病気のため、疑った段階で抗生剤による治療を開始します。また、急性腎不全や肝不全、症状に伴う全身状態の悪化に対して点滴治療などで改善を図っていきます。
しかし、レプトスピラ症は適切な治療を行ったとしても死亡率の高い病気です。そのため、レプトスピラに感染しないための予防が重要といえます。

〇レプトスピラはどうやって予防したらいいの?

レプトスピラの感染予防としてワクチン接種が有効です。野生動物の多い地域の川や田んぼ近くをよく散歩する子、アウトドアによく行く子は接種しておくことをおすすめします。ワクチンの効果は約1年間とされているため、毎年の接種が必要です。

奈良動物医療センターでは現在、レプトスピラ抗体を含むワクチンとして8種ワクチンと10種ワクチンを在庫しています。8種ワクチンは基本のワクチンに加えてレプトスピラのカニコーラ型とイクテオヘモロジー型、10種ワクチンはそれに加えてグリッポチフォーサ型とポモナ型に対応しています。レプトスピラだけのワクチンもあるため、3年に1回ワクチン接種している子はそちらを毎年打っていただければと思います。
しかし、レプトスピラには多くの血清型があるためワクチンに含まれていない型には効果がありません。ワクチンを打っていたとしても、特に野生動物の多い地域では不用意に川などの水を飲んだり、入ったりしないことが大切です。また、台風などで河川の増水後にはレプトスピラが広がるため、しばらくは浸水した地域は散歩しないようにしてください。
レプトスピラの感染を防ぐためには、流行地域の把握とワクチン接種が重要です。それでもレプトスピラ症にかかってしまうことはあるので、怪しい症状がある場合はお早めに動物病院を受診してください。何かご不明な点があればお気軽に奈良動物医療センタースタッフまでおたずねください!

担当獣医師
盛下基夢
担当医の一言:院長が保護した猫(おにぎり)とルームシェアして暮らしています。最初は距離感がありましたが、だんだん懐いてきてくれており嬉しいです。


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