犬の前十字靭帯断裂:3つの手術方法について

膝の靭帯が切れてしまったというのは、人でも運動中に起こるケガとしてよく聞かれると思います。犬でも同様のことが起こります。膝の靭帯はいくつかありますが、多くはその中の前十字靭帯が損傷することを表しています。完全に断裂してしまったり、部分的に損傷することでうしろ足を痛そうに上げるようになります。
小型犬〜大型犬までさまざまで中年齢以降で発生が多くなります。小型犬では膝のお皿が不安定な膝蓋骨脱臼が併発していることも多いです。

前十字靭帯の断裂は触診やレントゲン検査によって診断を行います。部分的な損傷であれば、関節鏡を用いることで小さな傷口から直接関節の中を観察し、必要な処置を行うこともできます。

基本的に切れてしまった靭帯を直接つなげて元に戻すということはできません。人では靭帯の代わりに腱の一部を持ってきたり、人工靭帯を使って靭帯を再建する方法が取られています。ただ、犬ではこのような方法で靭帯を修復する方法はまだ一般的ではありません。治療方法には、主に関節外法、脛骨粗面前進化術(TTA)、脛骨高平部水平化骨切術(TPLO)が挙げられます。それぞれにメリット、デメリットがあります。
まず、関節外法とは、大腿骨と脛骨に人工靭帯を通して、膝を関節の外側から安定化を図る方法です。適切な位置や強度で固定しないと膝の動きに影響が出てしまいます。1960年代よりさまざま術式や変法が報告されています。
TTAとTPLOはそれぞれ脛骨を切って移動させるという方法です。細かくお話しすると非常に複雑になってしまうのですが、「膝にかかる力をうまく分散させることで、前十字靭帯がなくても膝が安定するように脛骨を矯正する」とご理解いただくと良いと思います。骨の切り方がそれぞれの手術方法で異なるのですが、現時点では絶対どちらかの方法が良いというのはありませんので、その症例の靭帯の状態や骨の形などを考えて選択しています。当院における手術から入院の流れについてはクリニカルパスをご参照ください。

完全断裂であれば症状をはっきり示すと思うのですが、部分損傷であればわかりにくいこともあります。そのまま慢性的な関節炎が続き、運動後や休息後の動き始めにうしろ足をかばう様子が見られることもあります。また、お座り試験(sit test)と言われますが、おすわりの時に足が横に流れてしまうというのは痛みなどによって関節を曲げにくいことで起こっている可能性があります。これは、膝だけでなく股関節や足首の問題でも起こりますが、前十字靭帯損傷の症状の一つなので普段のおすわりの様子もよく観察してみてください。

また、犬の前十字靭帯は単純な外傷によって起こる疾患ではなく、もともと靭帯が弱ってきたところに強い負荷がかかって切れてしまうというように、左右両方の靭帯の問題であることも多く、30〜50%の症例で反対側の靭帯も切れてしまうと言われています。一度、靭帯を損傷したことがあるならば、反対側の膝も含めてできるだけ負担がかからないような生活を配慮した方が良いでしょう。例えば、フローリングのような滑りやすい床を避けたり、関節に負担がかからないように体重管理をするなどを考えてあげてください。

人も動物もしっかり動けることが生活の上でとても重要な要素です。いつまでも楽しくお散歩ができるように、関節のケアも大切に考えてみてください。

 

担当獣医師 高村淳也
奈良動物医療センター 外科主任
JAHA 日本動物病院協会認定外科医
担当医の一言:整形外科分野で奈良県立医科大学の大学院で勉強しています。人医療の技術を動物医療に応用できることがないか考えています。

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